地球のほぼ裏側から・・・

こゝろ / 夏目漱石

こころ (新潮文庫)

夏目 漱石 / 新潮社


こころ / 夏目漱石 を読了。
自分の記録のためにここに書いておくので、興味のない方はスルーしてくださいね。長いし。
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確か、中学生のとき読んだと思うのですが、その時はこんなに考えさせられませんでした。それはこの話の深さが、中学生の時以降、たくさんの時間経て、経験したことでわかるようになったからでしょうね。そう思うのは本に対してだけではなく、若い時に訪れた場所、たとえば修学旅行の行き先で出会った歴史的文化財、自然、10代の終わりに初めて行ったヨーロッパ、特にフランスで見たものは、興味の幅が狭かっただけに、いまいち感情を奮い立たされませんでした。でも、今行ったら!!!それはそれは大興奮で、事前にさらに勉強や下調べしてから臨むでしょう。なのでもっと年を取ってからの旅行ってとても意味のあるものになりそうで、いつか行けると思うと楽しみです。

もちろん、若い時に行って、刺激を受ける、自分の人生観に影響することは、とても素晴らしい経験だと思います。

さて、本題に戻りますと、この”こころ”は純文学というくくりに入るそうで、純文学の定義というのは、Wikipedia先生によると、以下の通りとなっています。

純文学(じゅんぶんがく)は、大衆小説、あるいは小説一般に対して、商業性よりも「芸術性」・「形式」に重きを置いていると見られる小説の総称とされる。

あらすじは、とても長い話なので、大きく3つにわけてみます。

1. 『私』と先生
ある夏、大学生の『私』は、鎌倉で先生に出会う。先生を知りたいと思う純粋な気持ち、知り合っていけばいくほど、ぐいぐいと先生の世界に一方的にのめりこんでいくさま。一方で、先生は彼に会ったことが特に彼の生活に影響があったとも思えぬ、一見、無関心にも見える態度。けれども時間が経つにつれて『私』は先生に正直に、真面目にぶつかっていく。そして『私』は真面目に人生から教訓を得たいのだと打ち明ける。それに同じだけの誠意をもってぶつかろうとする先生。「あなたが真面目であるなら、私もいつか私の闇について話しましょう、でもそれは今ではない、その時が来たら」と。
*なお、先生は、『私』から先生と呼ばれているけれど、特に仕事をしていない、この頃『高等遊民』と呼ばれていた、仕事をせず、本を読んだりして過ごしていた有閑人。なんとまあ贅沢な位(くらい)でしょうか。

2. 『私』と父
父の容態がよくなく、国に戻って家族との時間を過ごす『私』。そこで両親と『私』の居場所(田舎と東京)による温度差を感じたり、将来の事を考えていると、父の具合は悪化し、危篤を迎えてしまう。ところが病床の父を見守っているところに先生からの速達が届く。それもかなり分厚いもの。嫌な予感を感じた『私』は席を立ち、手紙の封を切る・・・するとそこには「この手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもうこの世には居ないでしょう。」と書かれている。慌てて汽車に飛び乗り、そこで先生の手紙を読む。

3. 先生と手紙(遺書)
先生のこれまでの人生(両親を亡くしてから、頼れるはずであった叔父に遺産のことでだまされてしまう)と、それを捨てて東京に渡ってから始めた下宿生活の事を語る。そこには未亡人である奥さんとその娘(お嬢さん)がおり、時間をかけつつ3人の関係が非常によくなってきたところで、先生はお嬢さんに恋をする。また、住まいに困っていたKという友人を、彼の取り計らいで同じ下宿に住まわせる。ところが、普段無口なKがある日、彼のお嬢さんへの恋心を先生に打ち明けるのだ。突然の告白に驚き、震え、同時に先制されたと言う焦りを感じ、窮地に追い込まれた先生は、Kには平静を装いつつ、裏では奥さんに「お嬢さんを嫁に下さい」と言う。奥さんは了承したものの、なかなかKに言い出せない先生。だがそれをよそに奥さんはKにその事を話していたのである。それを知った先生はKに自分の気持ちを伝えようと決意するも、その決意むなしくKは翌日に自殺をしてしまう。
何も知らず悲しむ奥さんとお嬢さん、そして大学を卒業した後、先生はお嬢さんと結婚。だがその後悔と罪悪感、生きている意味がないのではないかと繰り返される疑問は長い間消える事はなく、明治天皇の崩御、乃木大将(明治時代の軍人)をきっかけに自決する事を決心する。。。。


■読み終えて
先生の重い、だけど忘れることのできない過去、暗闇。うーん。一人の人を、それも親友を、絶望の末に死なせてしまっているのだから、重くないわけがない。
『私』の若さゆえの純粋な好奇心と、先生に対して謙虚かつ正直である姿は好感が持てました。1の中で『私』が先生に対し、自分がこころの底から真面目であることを誓った時、『私』は息詰まる先生にほんの少しだけ、少しだけ、温かい光のようなものを与えた気がします。だから旅立つ前にこの手紙を『私』に残そう、自分がこの世でたった一人、信頼できる相手になってほしくて、こんなに長い手紙を、長い時間をかけて、そして死ぬタイミングをずらしてまでも書いたのでしょう。

非常に重くて暗い話ですが、いろいろなことを考えさせられる優れた作品だとおもいます。現代の恋愛とは違って、振られたら次探そ、というわけにいかない、真面目な時代です。だからこそ一人ひとりの気持ちがとても大きく、相手の気持ちで左右されたり、苦悩したりしていたのでしょう。

■先生の気持ち
自分のKに対する親切心が思わぬ展開を生んでしまったことへの強い後悔と嫉妬心。先制でヒットを打たれ、そのショックで空振りはおろか、バットさえ振れなくなってしまうほどのわなわなとした感覚。わからなくもない。だけど、強がってKに「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と言い放ち、その隙をついて陥れてしまった先生は最低。それも正々堂々ではなく、こっそりと裏取引だなんて。

でも、それは作中で本人も言っていたように、「策略で買っても人間としては負けた」わけで、卑怯だ。さらにKの自殺のほんとの理由を奥さんにも、お嬢さんにも打ち明けないまま結婚してしまったこと、また結婚してからも、お嬢さん(妻)が悲しむからいうけれど、というよりも、きっと自分を軽蔑するからと思って最後まで言わなかったことは、自分をよく見せたいがためのエゴイズムでしょう。たとえそのことを一生後悔しながら、生きていく事を覚悟したとはいえ、結局奥さんを残して先に逝ってしまうのはずるい。

■Kの気持ち
勇気を出して打ち明けたのにもかかわらず、最も信頼してきた友に裏切られたら、、、失恋で終わることのできない事実と絶望感。うぅ想像するだけで悲しくなってしまう。失恋だって、明日目が覚めても、昨日の事は現実で、夢ではない、あのどうしようもできない、一生立ち直ることができないんじゃないかと思うほどの悲しい気持ち。現実から目を背け、ずっと寝ていたいと思ったことがあります。それでも食欲だけは失せないのがわたしのなんですけど(笑)

■時代背景とか
この時代の人たちが、今生きていたら、また違う物になっていたかもしれないし、繊細な人はいつの時代も繊細なのかもしれません。しかしこの時代、作家先生や外国の画家や音楽家は、悩んだ末自殺したひとが多いのが気になります。とても弱い人たちだったのかな、失望し、生きる意味を見出せなくなったのかな、と考えます。そんな時、ペンや筆、楽譜を置いて旅に出ることは難しかったのかな。独特の暗さがある。もちろんそこには自分の心の闇や、自分について考え、それが作品となって長い月日が経った後でも我々読書にもこうして考える機会を与えてくれているのですが。

今は夏目漱石の魅力に引き込まれています。続けて他の作品も読んでみようと思います。

終*
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by af_daba | 2011-04-06 22:45 | Book/Movie

縁あって住むことになった地球のほぼ裏側、ジャマイカで、私ことdabanが目で見た、感じた日常をおとどけしまーす。ゆるく、時にあつく。第5シーズンに突入しました。
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